今回は気になるCDNの料金について掲載したいとおもいます。ここ数年でCDNの料金は大きく変化したため、過去と比べ現在どのような状況になっているか、また高いCDNと安いCDNで何が違うのかまとめてみました。
CDNの料金
従来までCDNサービスといえば料金非公開が一般的でした。(2017年、現在もAkamai、limelight、CDNetworksなど大手ベンダは非公開)
しかし、Amazon CloudFrontに代表されるCDNサービスが国内でも増えてきており、近年では料金が明確になってきています。そのような背景の中、国内で提供されているCDNサービスは弊社が定額CDNを始めてから大凡2倍程度になっており、利用者としては以前とくらべ選択肢が増えて嬉しい状況の一方、一体なにが違うのかという点で選ぶのに悩まれるケースも多いと思います。
CDNサービスはまず料金をチェック!という場合や、やりたいことが出来るかどうか技術的な観点で選ぶ場合もありますが、今回は主要CDNサービスの配信料金についてまとめてみたいと思います。
料金一覧(2017年10月現在)
keycdn | cloudfront | maxcdn | fastly | idcf | cdn77 | Azure CDN | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
10TB | $0.12 | $0.14 | $0.10 | $0.19 | ¥9 | $0.13 | ¥14.08 |
40TB | $0.12 | $0.14 | $0.08 | $0.14 | ¥9 | $0.12 | ¥13.26 |
100TB | $0.11 | $0.12 | $0.07 | $0.14 | ¥9 | $0.11 | ¥12.24 |
350TB | $0.11 | $0.10 | $0.05 | $0.14 | ¥6 | $0.11 | ¥10.20 |
500TB | $0.09 | $0.08 | $0.05 | $0.14 | ¥6 | $0.11 | ¥8.16 |
このように国外CDNは転送量とディスカウント率で料金表をつくることができます。もちろんこれら以外にも、ある程度のボリュームがあるとさらにディスカウントが効いてくる場合もありますがそのあたりは明確化されていないため割愛します。
こちらはAsiaへの配信料金をまとめたものです。Asiaむけ配信はアメリカやヨーロッパの次に高い配信地域となります。※インドやブラジルあたりがAsiaの次に回線コストが高い傾向のためAsiaが最も配信コストが高いわけではありません。
料金の値上げをしたCDN事業者
さて、利用者からすると1GBあたり1円でも安く配信できたほうがコストカットできるとおもいますが、従量課金CDNの配信コストというのはもちろん原価割れしない最低価格というのがあります。つまり、安すぎる価格には理由があるということです。
その一例としてどこよりも安くグローバルに配信できることが売りであった、スイスのCDNベンチャー企業KeyCDNはAWS Cloudfrontの数分の1の料金ということで一部利用者の間では話題になりました。
しかし2017年、2回にわたって料金の値上げが行われ、現在ではCloudFrontとほぼ変わらない料金になっています。このように、ある国の情勢によって回線コストというのは前後しやすい状況のため、各社金額が横ばいというのはそれなりの変動を考慮した価格設定をおこなっていることがうかがえます。
KeyCDNは従量課金CDNの中でも利益をギリギリ保った大胆な金額で他社と差別化を計ろうとしてました。近年の情勢変化で値上げを余儀なくされてしまいましたが、やはり安いCDNには安いなりのワケがあるということです。
高いCDN料金にはワケがある
CDNの料金は現在でも非公開であったり、従量課金CDNでも高い料金と低い料金が分かれています。次は、高い料金のCDNについて何故高いのかという理由に触れてみたいと思います。
最適な経路を選定する技術
Akamaiなど大手高級CDNベンダーは、ネットワーク経路の遅延状況を計測しもっとも早い経路にあるキャッシュサーバーのIPを応答させる仕組みがありますが、安いCDN事業者はそのような仕組みを実装していない場合があります。※実際はオプションで存在していたり、そもそも実装されているかどうか非公開なことが多いです。
国際的な天災時も影響を回避したBestPath
Akamaiで有名なお話ですが、ある国で天災が発生し海底ケーブルが切断されてしまった際、Akamaiは一番早いと思われる迂回ルートでコンテンツを配信したため少ない影響で済んだという例があります。このお話は決してグローバルにコンテンツを配信する場合に限定されたことではありません。日本国内の配信でも同じような迂回ルートが必要な場合があります。
2017年8月25日日本国内で起きた大規模通信障害
日本国内で2017年8月25日に発生した大規模な通信障害。当初なにが問題だったか判明せず、CDN事業者やクラウドベンダーは「調査中」というお知らせを出したまま1時間前後経過後に一部の経路問題ということを通知した。
この通信障害の原因は、米グーグルが誤って経路情報を大量に送信したことが引き金となって起こり、ある経路情報の再計算に時間がかかったことが原因でネットに接続できなくなったり、通信が不安定になったりしたと言われています。これらは、CDN事業者やクラウドベンダー側の回線が問題だったというわけではなく、アクセスするユーザーのインターネット回線が問題となっていたわけでもない。ユーザーからWEBサイトに接続する際の経路上の問題のため、接続元のユーザーによって繋がったり繋がらなかったりしていました。
このように、通信経路問題を回避する仕組みは国内外に問わず必要となってくる技術と言えます。
HIT率
CDNで次に重要視されるのはHIT率という数値です。これらは、コンテンツをキャッシュしたCDNから配信した割合を示しており、高いHIT率であればあるほど、オリジンサーバーにコンテンツを取りに行かずCDN側で負荷分散しているため有効にCDNを利用出来ているといえます。
中間キャッシュサーバー
CDN事業者によって、これらのHIT率を高める様々な工夫をしています。たとえば、分散型CDNの場合キャッシュサーバーの数だけリクエストがオリジンサーバーに到達してしまうケースがあります。よって全体の割合でみるとHIT率が低下してしまう恐れがあり、これらを回避するために中間キャッシュサーバーをおいて更にHIT率を高めるような工夫をおこなう手段があります。
エッジキャッシュCDNでも、中間キャッシュサーバーを配置するケースがあるのですが、常時配置しているとコストがかかってしまうため、負荷状況によって動的に紐付けてHIT率を高めつつランニングコストをダウンさせる工夫をしています。CDN事業者によってはこのような中間キャッシュサーバーはオプションだったりするケースが多いです。
ストレージの容量
また、キャッシュサーバーのストレージ容量が少ない場合、古いキャッシュから削除されていくためHIT率が低下しがちです。そのためある程度大容量ストレージを乗せているCDN事業者が多いです。
弊社ではコンテンツのサイズやTTLに応じて、ストレージをRAMとSSDそれぞれに分散キャッシュし、効率を高めています。※キャッシュサーバーのストレージ容量はどの事業者も非公開が多いです。
低価格CDNを提供できる理由
弊社が展開している定額CDNは、どのプランでも国内配信コストで比較すると1GBあたりの転送料金は3円前後で計算できる場合もあるため2017年現在でも国内最安をうたっているつもりですが、このような安い価格ができる理由があります。
日本国内メインの展開
外国CDN事業者は世界にPOPsというキャッシュサーバーを大量に配置してバランシングしなければいけません。しかし、弊社はそのようなことをする必要は無く外資ベンダーと比べても、設備費用を抑えることができます。ローカルCDN事業者の特権です。※逆にグローバルに配信したい場合は、他社CDNより割高になってしまうケースがあります。
使用率90%以上をたたき出す高密度ロードバランシング
配置しているキャッシュサーバーの上位IXの特性を人工知能で解析し、契約ネットワーク帯域を90%以上使えるようなバランシングをしています。そのため、通常のCDNベンダーがサービス展開にかかる初期コストや契約している帯域幅で利用されていないパーセンテージを限りなく少なくすることで、ランニングコストを抑えサービス価格に反映し低価格CDNを実現しています。
また、Akamaiの話にあったように、弊社はこのような大手CDNベンダーが適用しているバランシングと同等の機能を全プラン実装しているため、例えばIXなどバックボーンのつながり方にもよりますが、経路問題で特定のユーザーのアクセスがある時間だけ遅くなることを極力回避できます。
機能を絞って配信に特化した構成
シンプルなキャッシュ配信だけおこないたいという人もいるとおもいます。それなのに、標準で様々な機能を詰め込んでしまうと、メンテナンスやUPDATE、保守コストがかさみ提供価格に反映してしまいます。さらに、仕組みを複雑にすればするほど、CDN事業者は柔軟なカスタマイズができずお客様のご要望をすぐに取り入れることが難しくなります。
エッジキャッシュプランは一般的な配信に必要な機能のみ絞り、他社で標準実装されているOneTimeURLなどはあえてオプションとしています。
まとめ
従来まで、CDN事業者と契約するためには、WEBサイトや販売会社経由でCDN事業者とコンタクトを取り、CDN事業者はお客様の顔色をうかがいながら「予算はどの程度ですか?」とまず予算の話から入る、所謂インターネット回線事業者との契約に近いフローでした。
近年では従量課金CDNが多くなり料金が分かりやすく透明性があるものとなってきました。一方で、価格差があることも事実。これらはCDNでただコンテンツを配信するという仕組み以外に、見えないバックエンドの技術の差というものがあることがお分かりいただけたとおもいます。
そのため、単純に料金や会社のブランド名以外の要素をしっかり比較し、CDNを選ぶことが重要な要素であることは間違いありません。